かもめのジョナサンを読んでみた‼︎(ネタバレ注意)

かもめのジョナサンという本をご存知でしょうか?

 

かもめのジョナサン

リチャード・バック 著

五木寛之 創訳

ラッセル・マンソン 写真

 

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空飛ぶかもめ

かもめのジョナサンは1970年にアメリカで出版されました。当時のアメリカのヒッピー(※1)たちの間で徐々に広まっていき、全世界で4000万部以上を出版する大ベストセラーになりました。

 

※1  1960年代のアメリカに台頭した、保守的な伝統文化からの脱却を目指す人たち。東洋思想やロックを好んでいた。服装もカラフルで個性的。

 

 

あらすじ

 

もっと他人を愛することを学ぶことだ。

「飛ぶ歓び」「生きる歓び」を追い求めたジョナサン。奇跡の最終章を新たに加え、伝説のかもめがあなたを変える。世界四千万部のベストセラー。

「飛ぶ歓び」「生きる歓び」を追い求め、自分の限界を突破しようとした、かもめのジョナサン。群れから追放された彼は、精神世界の重要さに気づき、見出した真実を仲間に伝える。しかし、ジョナサンが姿を消した後、残された弟子のかもめたちは、彼の神格化を始め、教えは形骸化していく……。新たに加えられた奇跡の最終章。帰ってきた伝説のかもめが自由への扉を開き、あなたを変える! 

 (アマゾンの商品紹介より引用)*1

 

感想 (ネタバレ注意)

読む前は、かもめの成長物語だと思いワクワク気分だったんですが、一羽のかもめの成長物語というにはあまりにも壮大なスケールの話でした…。

物語は四つに区切られています。(発行当時は三つだったが、2014年に最終章が追加された)

 

 

 

 Part1

飛行練習を重ねるうち、なんと時速342㎞もの速さで飛ぶことに成功するジョナサン。(新幹線よりも早い)

そんなあまりにもカモメらしくないジョナサンを群れの長老たちは追放してしまう。

しかしジョナサンはめげずに追放先でも飛行練習を続けるのでした。

そんな中二羽の星の様に輝くカモメに連れられてどこかへと飛び立って行きます。

 

 

Part1は、とにかくジョナサンの能力がいかに土を超えているかがわかる内容でした。長老が追い出した気持ちもわからなくない…

どんな逆境に置かれても、心が折れかけても決してあきらめない、ジョナサンの芯の強さを感じました‼︎

私は自他ともに認める情弱人間なので、ジョナサンのように一つのことに熱中できるのがとても羨ましい限りです。

きっと自分はただ目の前のパンや魚を追うカモメなんだろうな、ジョナサンを追放する側なんだろうな、と思うと少し虚しくなりました。

 

 

 

 

 Part2

Part2になると舞台はかもめの飛行練習場(ジョナサンは天国のような場所と表現しています)へ移ります。

ジョナサンは教官サリヴァンと飛行練習をするようになり、次第に仲を深めて行きます。

ある暮れ方、思案にふけるジョナサンの前に張(チャン)という一匹の年老いたカモメが現れます。

その日からジョナサンはチャンに師事することとなり、飛行とは、時間とは、空間とは何かを教わります。その結果ジョナサンは瞬間移動の術を習得しました。

愛について考えを巡らすうち、とうの昔に追放された故郷の群れが恋しくなったジョナサン。

友人のサヴァリンに別れを告げ一人群れに戻ることを決心します。

その後、群れから外れた一匹のカモメを目にします。名前はフレッチャー。まるでかつてのジョナサンのように追放されてしまったのでした。

 

 

ついにジョナサンが物事を悟り始めるPart2です。

チャンとの修行に東洋的な時間や空間の考え方が出てきたのが意外でした。東洋思想を好んだヒッピーたちの愛読書となった所以はここら辺にあるのでしょうか?

一見するとチャンの話はとてつもなく難解で理解するために何回も読み直す必要があるほどです。(自分の読解力の問題かもしれませんが)

そんなチャンの話を理解して実行できるジョナサンの知能の高さが窺い知れます。

それにしてもジョナサンのストイックさに肝を抜かれます…

 今回の章でジョナサンは追放された群れに戻ることを決心しました。

 フレッチャーというかつてのジョナサンと瓜二つなカモメに出会いフレッチャーの師となりまあすが、その時のジョナサンの悟ったような話し方に驚きました。さっきまで飛行一筋のかもめの青年だったので、少し寂しくなった気がしました。

全てを許し、愛せるようになるとやはり人格も変わってしまうものなのかもしれないですね。

 

 

 

Part3

 Part3ではジョナサンがフレッチャーに師匠としてものの見方や飛行技術を教えています。かつてチャンから教わったようにジョナサンは空間とは、飛ぶこととは何かを説くジョナサン。

フレッチャーもやがて一人前のカモメとなり 、ジョナサンと別れる時が訪れます。

フレッチャーは多くの飛行を志すカモメのために空間とは、飛ぶこととは何かを説くのでした。

かつてフレッチャーから教わったように。

 

 

 

ここで物語はひと段落をつきます。ジョナサンとフレッチャーの関係はチャンとジョナサンの間柄を見ているようで、懐かしく思うだけでなく、全ての物事は巡り巡るという自然のサイクルをも見ているような気がしました。

ただただ早く飛ぶことのみを目指していたジョナサンが、いつの間にか師従というサイクルのなかにいるのはとても感慨深いです。

憎しみではなく愛を持って接するというこの物語の本質の一つが描かれているのではないでしょうか。

 

 

 

Part4

Part4ではジョナサンが消えてからしばらくの時がたったフレッチャーの話から始まります。残念なことにジョナサンはカモメたちの間で伝説になっていました。カモメたちはジョナサンの教えではなく、ジョナサンの逸話や姿を知りたがるようになります。

まるでアイドルのように祭り上げられるジョナサン。そんな状況を憂えているフレッチャー。

やがて、ジョナサンの教えは一つの宗教の儀式のようになり、「飛ぶ 」という行為とはかけ離れた形式ばったものとなってしまいました。フレッチャーの死後、その勢いは止まることなくどんどん広まって行きます。

そんな中、こんな現状に不満を覚える若いカモメがいました。彼の名前はアンソニーです。

アンソニーは現状を変えることのできない、日常の虚しさに襲われ自殺を図ります。高所からの投身自殺を行い落下する最中、一匹の白いカモメが高速で通過するのを見ました。

そのカモメは、ジョナサンでした。

 

 

 

以上でこの物語は終わります。Part4では一気にシリアスな雰囲気に変わります。表面の形式的な所ばかりを重んじ、内面の大切な所には目もくれない。私たちの身の回りにも、そんなことがあるのではないでしょうか?

ジョナサンの飛行技術を次の世代に引き継ごうとしても、聞く耳を持たないカモメたちに対し、ひどく悲しい気持ちになりました。チャンからジョナサン、ジョナサンからフレッチャーへと連綿と続いたサイクルが途切れてしまうわけですから。

 

 

 

名言

「そうだ、本当だ!俺は完全なカモメ、無限の可能性を持ったカモメとしてここにある!」

 (自分の可能性を決めつけてしまうのは常に自分自身なんだと気付かされる一言です。)

 

「もっと他人を愛することを学ぶことだ。よいか」

(憎悪に駆られることなく 、許し、愛す。とても難しいことです。)

 

「正しい掟というのは、自由へ導いてくれるものだけなのだ。」

( 確かに、みだりに人を縛りつけるだけの掟は良くないのでしょう。)

 

 

 

どうだったでしょうか。名言がたくさんあり、この本が自己啓発本としても読まれる理由がわかった気がします。

 

訳者の五木さんによる解説も面白く、それだけでも読む価値がある一冊でした。